ベトナムとサムスン
中国より安いベトナムの人件費
ベトナムの産業は、国内企業による事業展開よりも外資企業の進出が大きな割合を占めているという特徴があります。特に製造業の外国企業の進出は目ざましく、国内の様々な場所に大規模な工場が建設されています。
この流れは2000年代の中ごろから急速に加速してきました。この背景には、「世界の工場」として世界中の企業が工場を作っていた中国における人件コストの上昇が挙げられます。
中国での生産ではコストが見合わなくなってきているという現実を目にして、さらに安い労働力を確保できるベトナムに工場を移すようになったのです。
とはいえ、ベトナムの魅力は単に人件費が安いというだけではありません。ベトナム人は総じて勤勉で誠実に仕事を行います。決められた仕事を丁寧にしっかりとしますし、一日の労働でも集中力を切らすことなく長時間労働ができますので、とても高い生産性を保っているのです。
また、治安がいいことや、政治情勢によって工場生産が不安定になるリスクが少ないというのも大きな理由です。この点で中国は、政権による動きによってトラブルが生じたり、労働者のストライキなどが発生したことが多い時期がありましたので、リスクを避けるという意味でもベトナムに工場を移すところが増えたのです。
サムスンの工場建設がきっかけ
特に2009年にサムスンが携帯電話の生産工場を建てたというのは大きな転換点となりました。
これを始めとして、2010年代になってから韓国企業、特にサムスン系の企業が次々とベトナム国内に工場を建設するようになったのです。半導体工場、ディスプレイ生産工場などを建設していき、大規模な生産拠点がベトナムに生まれるようになりました。
しかも、幅の広い製造業がなされるようになり、ベトナム国内での生産ノウハウが蓄積されていったというのも大きなメリットです。
他の韓国企業も次々と自社工場を移転、もしくは新規建設するようになっています。実に5,000社以上の韓国企業がベトナムになんらかの生産拠点を構えていて、相当な韓国マネーがベトナムに流入しています。すでにほとんどの分野での電子・電気関連生産工場ができていますが、さらに新しい工場を建設するプランもあり、この動きは当分続くことが見込まれています。
日本を始めとする他の海外企業も同じようにベトナムでの生産を行うようになっています。製造業の他には繊維業が多く、各国の有名ブランドがベトナムを生産拠点とするというケースも多くなっています。世界中の企業がベトナムに集まってきていますので、かなりの製造拠点が各地に作られるようになっています。
サービス業の進出
製造業だけでなく、韓国企業はサービス業でもベトナムに進出するようになっています。ファストフードや食品の販売をベトナムで行うようになっている韓国企業は多く、かなり急速に店舗展開が進んでいます。
ベトナムは9,000万人もの人口を持っていますので、かなりマーケットが大きいですし、韓国エンターテインメントが人気という背景もあって、ベトナム内での成功が期待されているのです。